スパイス  組み込み制御装置の受注製作

自社標準仕様の製作
平成27年 8月 2日

 一ヶ月以上も更新出来ませんでした。この間のほとんどを汎用の通信プログラムのコーディングに充てていました。
というのも、今後の受注設計では客先の要望に全面的に合わせるだけではなく、自社の標準仕様として提案できる製品を持ちたいとの思いから、一般的な機械制御に対応できるプログラムの雛形を作っていました。
 今後暫くは、このプログラムの概要について書いていきます。多分、これが説明書の原案になります。

 汎用の高速シリアル通信機能  
 三菱電機社製シーケンサに採用されているCC-Linkやオムロン社製シーケーンサのDevice-Netのように高速なシリアル通信機能を使って複数のCPUを接続するネットワーク型の組み込み装置が増えてきています。この方式の最大のメリットは、装置内部の総配線量を大幅に削減できる点です。総配線量が減ればそれだけ現場での配線作業にかかる手間も減っていきます。
    メリット
 従来方式であればCPUやシーケンサー本体から数十〜数百本のケーブルが装置内の各所にある全てのセンサやユニットに向けて配線されていきます。このため配線に使用されるケーブルの総延長は非常に長いものになっていました。
 新しい方式では、装置の各所に小さな通信基板を配置します。メインのCPUとこれらの基板は僅か数本の信号線と電源線でのみ接続されています。装置内にあるセンサやユニットとの接続は、それらの近くにある通信基板に対して行われるため配線が一箇所に集中することを避けることができ、また、これらの総配線長も従来方式に比べると格段に短く出来ます。
    デメリット
 動作の大半に通信が介在しますので動作速度の面では不利になります。例えばIOの入力値一つを更新するだけでも従来方式なら1us以下ですが通信方式では百〜数百us程度必要になります。また、プログラムもその分複雑になりがちです。


    標準仕様の概要
 仕様を決めるにあたって一般的な組み込み装置を前提として以下のように目標を決めました。

   ・通信IFは歴史の長いRS-485IFを採用する。最高通信速度は1Mbpsとし、このとき許される配線長の上限はおよそ100mまで。
 今の時代ならCAN通信の方が有利な点も多いのですが、古い装置を扱うことも多いのでどちらでも使えるRS-485を使用することに決めました。RS-485自体は10Mbpsまで通信出来るようですが、その場合は通信できるケーブル長が数十m以下にまで制限されるようです。小規模な装置なら問題ない長さですが中規模程度の装置には少し足りません。せめて100mまで使用できるようにするには通信速度を落とすことになります。なお、通信速度とケーブル長の関係は使用するケーブルの種類とドライバICの性能によって決まります。大半がケーブルの種類に依存しますのであまり多くの期待はしない方がいいです。ケーブル代が高くつきます。
 1Mbpsという通信速度はアスキーコード1文字を10us程度で送ることが出来ますので、従来のシリアル通信との比較では非常に高速です(RS-232Cで一般的な速度は9600bps程度ですので、1文字送るのに1ms程かかります)。一般的な組み込み装置では一回あたりの通信文字数はせいぜい数〜十数バイト程度です。半二重通信による通信方向切り替え時の時間的ロスを加味しても1ms以内に通信を終了することが期待できます。

   ・通信基板の枚数はプログラム上は100個以上まで可能だが、実用上は10個程度までを想定する。
 最大仕様を大きくするとその分小規模な使い方では無駄が多くなります。
おそらくは実際の使用環境の半分以上は通信基板の数が数個以内で収まるでしょう。
その程度の規模までを想定して標準仕様とします。

   ・通信部分での入出力は基本的なデジタルとアナログのみに固定する。
 メインのCPUと通信基板とのやり取りは基本的にデジタルとアナログの入力・出力に限定します。これは例えばエンコーダIF回路のように複数のデジタル信号および時間経過との組み合わせで値が決まるような回路部分は通信基板側に置き、その結果のみを通信でやり取りすることを示します。通信では通信基板が増加すれば通信間隔が長くなる上、エラーの発生する可能性があります。高速な動作ややり直し効かない処置は通信経由では行えません。従って、このような処理は全て通信基板側で実装します。

   ・通信の基本はマスタ・スレーブ方式とする。
 つまり、通信は常にメインCPUのあるマスタから始まりマスタから指定されたスレーブのみが応答を返すことが出来る。

   ・マスタは一度の送信で複数のスレーブに対して応答要求を出すことが出来る。
 半二重通信では通信の方向を切り替える時に通信が衝突しないように待ち時間をおく必要があります。このため通信速度を上げるためには出来るだけ通信方向の切り替え回数を減らす工夫が必要です。マスタは複数のスレーブへの要求を一度に送信することで、これを実現します。

 これらの詳細仕様を少しずつ説明していきます。

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