スパイス  組み込み制御装置の受注製作

自社標準仕様の製作
平成27年10月 9日

 汎用の高速シリアル通信機能(8)  RS-485 IF回路
 それ程大きな回路ではないのですが、それでも考えないといけない項目は多くあります。今回は実験基板なので、多少の無理や冒険は許されます。ジャンパ線で済む程度なら良しとして、まずはトライすることから始めます。

  RS-485 IF回路
 単純にCPUからの入出力をドライバICに接続すればいいと考えていると痛い目にあう回路です。
RS-485のドライバICとして国内で入手しやすいのはMAX485とその互換製品です。
それなりに便利なICですが、このICには幾つかのフェイルセーフ機能が未実装となっています。
特に重要なのが通信ケーブルが外れたときレシーバ端子の状態が未定義電圧状態になります。この未定義状態には二通りあり、一つは入力端子A・B共にオープン状態になる場合、もう一つは通信ケーブルから外れることによって基板内部に実装された終端抵抗(一般に120Ω)によって入力端子間がショート状態になる場合があります。
 これらの状態に対してフェイルセーフ機能を実装したドライバICもあるのですが、各社でこれといった決定打が無い様です。
例えばアナログデバイセズ社(以下AD社)のADM4852やTI社のSN75HVD08などです。TI社にいたっては10種類以上の製品があります。
これほどの種類がある理由も良く分からないのですが、部品の入手性という意味からも心許ない状況です。
 製品に使うときには出来るだけこれらのICを使うようにしますが、最悪これらのICが入手できない場合を想定して外付けでフェイルセーフを行う事を考えます。
 フェイルセーフ回路に関する記述は、主に海外メーカーのアプリケーションノートが参考になります。残念ながら国内メーカーには良い資料が少ない。一例として幾つかの資料を紹介します。
まず、日本語化された資料として
 TI社   http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja179/jaja179.pdf
 AD社  http://www.analog.com/media/jp/technical-documentation/application-notes/AN-960_jp.pdf
 こちらは英語ですが、各所の信号波形が示され詳しく説明されています。元々はナショナルセミコンダクター社の資料です。
 旧NS社 http://www.ti.com/lit/an/snla034b/snla034b.pdf
(大元は多分これ ftp://bitsavers.informatik.uni-stuttgart.de/pdf/national/_appNotes/AN-0903.pdf)

 デバイス内部でどのようにフェイルセーフ機能を実現しているかについては、AD社の資料に記述があります。今回は直接必要のない情報ですが、ある問題に対して対策を考えるときの方法の一つとして参考になる情報です。

 外付けでフェイルセーフを行う方法に関してはTI社の資料にまとめられています。以下に一部を引用します。

(TI社のデザインノート TIA/EIA-485(RS-485)のインターフェイス回路より引用)

 単純にプルアップ・プルダウン抵抗を付けただけのb)図では接続できるレシーバーの数が極端に少なくなってしまいます。
図中のu.l.がこの回路の負荷倍率です。最大で32までなので、この定数では二つ接続すら出来ません。
この回路で使用できるR1の最大値は約1.5kΩで、この時のu.l.値は9になります。これでも3個しか接続できない。

 この問題を解決したのがa)図です。レシーバの入力段に分圧抵抗を追加することで、入力信号を見かけ上増幅します。
この方法の欠点は、ドライバICとして一般的なMAX485形式のICなら二つ使用する必要があります。MAX485のピン配置ではドライバ出力とレシーバ入力のピンが共通のため、追加した分圧抵抗はドライバ出力までも分圧することになり、こちらは出力を減衰させます。RS-422用のドライバ端子とレシーバ端子が分離したICを使用するなら一つで済みますが、こちらも入手性の良いものがありません
(下図参照。分圧抵抗はレシーバの入力とドライバの出力の間に入る。図の上段がレシーバで下段がドライバを示している)。


 最後のc)図にAC終端が記されています。しかし、この方式は通信速度に対してケーブル長が短いときに限られます。つまり通常の終端抵抗を使ったときに使用できるケーブル長の上限(通信速度によって変わってきます)に対して数分の一程度の長さでないと使用できないのであまり実用性はありません。 何故そうなるのかの説明はかなり面倒です。上記の参考資料を注意深く読む必要があります。特に旧NS社の資料が参考になります。

 実験基板ではこれらの全てを実装できるように、a)図の終端抵抗部分にAC終端用コンデンサを追加できる回路として実装します。

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